Vol.7「雑誌デビューの後日談」
(有)インターデザイン研究所/上田 幸和

「機関紙で取り上げたいので取材日の予定を入れてください」と、ある日突然電話が来た。いったい何の事やら解らず過去に振り返って、やましい事がばれたかと狼狽するような始末の中、うわの空で生返事を返して受話器を下ろした。
有名なデザイナーならいざ知らず、私のような末端でウロウロしている者が雑誌に取り上げられるなんて、よほど人材不足も極みに達したのかナと妙な感慨と共に、さてどうしようと考え込んだ。どんな取材だろう、いっぱい写真を撮られたり、洗いざらいゲロしないと許してもらえないようなものだったらいやだな~等と、あらぬ方向に想いが突っ走り思案投げ首状態のまま数日を過ごした。
ところが取材当日は華やかな若い女性4人がクライアントの会社を訪れ、わいわいがやがやパチパチパチと社長の周りで取材と撮影をして嵐のように帰って行った。当の私と言えば若い女性に翻弄されるままニタニタしていたていたらくで、とても極まりのない顔を撮られてしまった。
まぁ考えてみれば中小企業がデザインを取り入れた成功例という特集なので、企業にスポットがあたっていて、1番がその会社の社長さん、2番は製品さん、3番がやっとデザイナーという厳格なる序列をはからずも表紙で再現するはめと相成った次第。それはさておき、これで当社にもご利ヤクは沢山有るだろう等と、貧乏事務所のデザイナーが算盤勘定をしながら、発売日を心待ちに指折り数えて待っていた。
なんでも大阪市内で78000部も無料配布するようで、恥ずかしながら1ヶ月間地下鉄の駅や公共施設で、ニタニタ顔が公衆の面前に晒される事になる。まぁそれはいい。とにかくこれをきっかけに新しいお仕事が来ないものかな~と期待に小さな胸を膨らませていた。…が、しかしご覧あれ。発売された表紙には我が名は有れど我社の名前が見あたらぬ。連絡先も記して頂けていない。う~ん。これではせっかく豪快に弾いた算盤も面目を無くして、どこぞに逃げ出す準備を始めないといけないし、その持ち主に至ってはいっそ隠居してしまいたいような気持ちになるのも必定。期待した売上高も霧の向こうにかき消えるように姿をくらませてしまった。
世の中思うほど甘くないので、期待は静かに心の奥にしまい込みヨユーでかっ歩するようでないと一流のデザイナーに見られないのだと思い至った次第である。いい勉強と言えばそれまでであるが、ここでへこたれないのが雑草デザイナー。私はその生え抜きを自称しているから、ひるむわけには行かない。
駅の隅っこの方に寂しく置いてあるフリーペーパーの中から我が誌面をわし掴みにして持ち帰り、これまでご厄介になったクライアントに送ることにした。下心を読まれないように注意深くご挨拶文を書き2~3冊ずつ封筒に放り込んではせっせと発送した。「届きましたよ~」と電話を掛けて来たりメールを送ってくれる親切で心優しい方々は、我が算盤玉に縁遠い方々である。期待の方面は寡黙を守っている。下手に連絡しようものならしっかり捕まって営業されても迷惑とばかりに、沈黙は金なりを決め込んでおられるご様子。まぁいいさ。いずれ何処かで役に立つと思っていたらヘンなところで見られていた。
天下のNHKである。あちこち経由して私のところにたどり着いたようではあるが、とにかく天下のである。何事かあらんと聞けば若手のデザイナーを取り上げた企画を考えているのでご協力して頂きたい。ついては某誌の表紙で見たことのある私にとりあえず聞いてみるか、と軽く思い付き電話をお掛けしたウンヌン。またしてもご利ヤクは我が頭上をかすめて彼方に飛び去り、再び帰って来てくれそうも無い。

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